2011年6月アーカイブ

<反射(その4)>

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各社スマートフォンの夏モデルがそろそろ出始めてきています。最近は800万画素!?が携帯電話のおまけに入ってしまうのでカメラを首から下げている人が少なくなりました。昭和の日本人のイメージとして、メガネをかけてカメラを首から下げているのが定番だったのですが、これからはスマホを指でピってしているのが定番になるような気がします。

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これは30年くらい前、夏休みに家事(農作業)を手伝ってやっと手に入れたカメラです。フィルム式のカメラですが、たまに写して“フィルムの方がやっぱ色が深い”などと言ってると妻に“どうせ撮るなら、どっかに連れてってよ”と言われる今日この頃です。

“M90”と言う表示が見えるでしょうか。これはマニュアルの“M”ではなく”メカニカル“の”M“です。これを使うと電池が全く無くても1/90秒の機械式シャッターで写真を撮ることができます。今では当たり前ですが、当時のカメラも電池が無くなってしまうと電動式シャッターが動かなくなり写真が撮れなくなるカメラが主流でした。電池を切らしてしまうのは、使う側のミスなので仕方ないと言えばそうなのですが、「その瞬間はもう二度と見ることが出来ない瞬間なのかも知れない。そんなとき、たとえ1/90秒の固定とはいえ、メカニカルシャッターがあれば、何かをフィルムに残すことが出来るかもしれない」そんな開発者の思いが“M90”には込められている様な気がします。このカメラメーカーはライバル会社がさっさと電動式シャッターに変えても、いつまでも機械式シャッターを捨てずに搭載しつづけています。
(今の主力はデジタルカメラとなっているので、ごく一部の機種に限定ですが。)

最近のデジカメで電池がなくなると“電池がなくなりました。充電してください”とメッセージが出るものがあります。でも、そのメッセージを表示するためのバッテリーが残っているなら、いま沈み行く綺麗な夕日を撮るために、あと2回、いや1回でいいから動いて欲しいと強く思います。

設計する側はサービスのつもりでも、使う側にとって見れば余計な事に成ってしまっていうことって案外多いのではと思います。作り手の勝手な思い込みではなくて、使う側のことをどれだけ真剣に想像しイメージし、思いを馳せたかを、その製品にしっかりと刻み込むことが、お客様との強い信頼を生み出していくんだなと思います。

 

 

高周波の回路設計を行っていると、Sパラメータに必ず出会います。なぜSパラメータと出会わないといけないかと言うと、集中定数では扱えなくなってしまったからです。
前回の様に高周波信号は反射を起こします。進行していくものと反射に依って逆方向に進むものとが有り、これらの表現の一つの方法がSパラメータです。

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http://www.microwaves101.com/encyclopedia/sparameters.cfm

図 1

図 1の様に回路網に対して左から入力される信号と出て行く信号、また右側にも入力される信号と出て行く信号が定義されています。つまり、右側も左側も進行波と反射波を考えているという事になります。
(注:図でa1とb1は別の端子に成っていますが実際は一つの信号線です。入力される信号と出てくる信号を区別するために2本に分かれているだけです)

 

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私がSパラメータ(以下Sパラ)に出会ったのはHP(Hewlett Packard)のネットワークアナライザーに触ったときでした。高価な測定器だったので、めったに触ることが出来成ったのですが、どうしても満足いく特性が得られず“Sパラを測定してみろ”と先輩に言われて恐る恐る触ったのがきっかけでした。

横軸が周波数になっている測定器との始めての出会いでした。

 

 

 

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実はSパラメータは日本人の黒川兼行さん(左の写真)が考案したものであったことをご存知でしょうか?
1965年IEEEに発表された“Power Waves and the Scattering Matrix”と言う論文でSパラがこの世に発表されたとのことです。http://www.microwaves101.com/encyclopedia/halloffame3.cfm

 

 

SパラのSはScattering(散乱)からきています。
何が散乱しているのかと言うと・・・

Wikipedia(http://ja.wikipedia.org 『Sパラメータ』)に依れば、 

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と書いてあり、散乱行列と言うのを使うので、Sパラと呼ぶのだと分かります。
 
正直いうとSパラは私にはまだ分からないことの方が多いです。
SPICEでは電圧や電流を扱うことに慣れているのですが、なかなか電力の方向まで扱うことが少ないため、イメージがつかみにくい事が原因ではないかと思います。

そこでSPICEでSパラを扱うことが出来る回路を紹介したいと思います。

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図 2

 

上の回路は端子PORTに接続された回路網のS11を計算して端子S11に出力してくれる回路です。
回路網で発生している電圧(端子PORTの電圧)を依存電源E0で検出し、信号源インピーダンスR0で発生している電圧を依存電源E1で検出して、前者の電圧から引いているだけです。


 

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図 3

 

今まで使っていた伝送路のS11を計算してみましょう。終端抵抗の値Rtmは50Ωです。

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図 4

 

低周波ではS11は低い値を保っています(つまり、反射が少ない)が、高周波に成ると
終端抵抗と並列に入っているコンデンサC0(10pF)の影響でS11が増加します。

図 1から


 

 

と表されます。もし、a2=0ならば(つまり、回路網の右側から電力が入力されない時)

 

20110628_9_misaizu.PNGとなって、反射係数と同じ計算式となります。つまり、

 

 

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と書くことが出来て、S11が分かれば回路網のインピーダンスZlがわかる事に成ります。
例えば200MHzのZlは終端抵抗Rtm=50Ωと10pFとの並列なので、

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に成っているのでS11は、

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となり、シミュレーションがほぼ正しいことが分かります。

伝送路の右から2つ目の特性インピーダンスZoを意図的に(製造誤差等を想定)60Ωにした結果も図 4にプロットしました。
この結果がネットワークアナライザーの実測とどのくらいの精度で一致しているかの確認はできないですが、大きなずれはないように思います。

高周波の世界でも、相手に伝えたいことがほんとに伝わるのには時間がかかることや、今までの環境と異なる環境にはスムーズに入っていけない事など、人の社会と同じようなことが起きているのが非常に興味深いです。

次回もこのSパラの世界を紹介する予定です。

<反射(その3)>

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D-CLUEは今月、第9期を迎えることができました。これも変わらぬお客様のご愛顧と、様々なパートナー様のご協力/ご支援のたまものと、厚く御礼申し上げます。

どんなに優れた技術やどんなに大きなビジネスでも、支えるのは人と人との関わりです。
この第9期は、ご愛顧頂いた感謝の気持ちを情熱に変え、お客様にさらに感動していただくことで、恩返しをさせていただければと思っております。
なお一層の御引き立てを、どうぞ宜しくお願い申し上げます。


今年も恒例の社内旅行(沖縄)に行くことができました。
これもひとえに社長を初め、様々な準備を自発的に進めていただいたスタッフの皆さんのお陰です。本当にありがとうございました。

今年はちょうど梅雨入りと重なっていたため、天気が心配されましたが、強力な晴れ男がいるためか、梅雨の晴れ間のすごい良い天気となりました。

 

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沖縄のビールと言えば、オリオンビール。工場が名護市にあって見学できるとのことだったので、ちょっと寄り道をしました。(もちろん試飲もありと聞いていたので・・・)

あまり大きな看板も無く、少し不安になりながらレンタカーのナビを頼りに住宅街の細い道を抜けると大きなタンクが何本も見えてきました。受付を済ませ、待っていると案内の女性が現れ、工場の施設の説明だけではなく、オリオンビールの歴史から新作のビールまで丁寧に説明してくれました。初めて知ったのですが、オリオンビールの工場はこの名護工場のみで、世界中のオリオンビールは全てここから出荷しているとの事です。
見学の中でビールにフタをする機械が目にも止まらない速さで回っていて、その機械に水をかけて冷やしているのが目に留まりました。彼女の説明に依れば、酵母菌にとって一番良い温度は15℃で、ビールにとって一番良い状態のまま密閉するために、水で冷やしながらのフタを締めていくのだそうです。
昭和32年、米軍の統治下という中で、沖縄の若者に“やればできるんだ”を見せたくて、あらゆる苦難を跳ね返して頑張った創業者の強い思いが今でも生きていると実感しました。
 

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オリオンビール

 一通りの見学の後の出来立てのオリオンビールは格別でした。

 

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恒例の大宴会です。今年も島歌ライブで全員が大いに盛り上がりました。
人と人が同じ場にいて、同じ音楽を聴いて、同じ空気を吸って、同じ時間を過ごして、同じ事に感動して・・・この“ライブ”こそが心を満たして、更に団結を深くしてくれます。

 

前回までは“反射”がどの様に波形に影響を与えるか過渡解析を使って説明をしてきました。今回は小信号解析(AC解析)も使ってもう少し反射について説明したいと思います。

“反射”と言うと進行する波と反射する波があり、それらが重なり合うので、なんとなく線形解析が出来ないような気がするのですが、どうなるか確認してみたいと思います。

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図 1

 

前回使った回路を図 1に示します。信号源インピーダンスRs=40Ω(多重反射を意図的に発生させます)で、終端側の抵抗Rtm=50G(Open)、寄生容量C0=10pFとしています。また、各伝送路超は50cmとしていますので、全部で2mの長さになります。電圧源V0を信号源として、Voutまでの周波数特性を計算した結果を次に示します。


 

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図 2

 

17MHz辺りでピーキングが発生して、それが繰り返されているように見えます。
横軸をリニアに変更した結果を下に示しました。


 

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図 3

 

横軸をリニアにすると、同じ形の繰り返しになっていることがよく分かります。周波数は35MHzで形も正弦波のように見えます。
横軸が時間であれば、よくある波形なのですが、このグラフの横軸は周波数です。
あまり見ない形になっているので、これで良いのか少し不安では有りますが、気にせず先に行こうと思います。

先ずは35MHzと言う数字はどこから来ているのか考えてみることにします。
35MHzの一周期は・・・ です。

伝送路の長さは50cm×4=200cm。伝送路の計算に用いている遅延は70psec/cmとしています(普通のFR-4はこのくらいの遅延になります)。

なので、信号の遅延量は、70ps×200cm=14nsecとなります。14nsecと言うことは

 

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の信号ならちょうど一周期分がぴったり伝送路に入ります。

 

 

 と成ると、2分の1周期では35.7MHzと成り、4分の1周期では17.9MHzと成ります。

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図 4

 

周波数特性でピークと成る周波数は伝送路の中に入れると、“腹”が反対側に表れ、反対に谷となる周波数は、“節”が伝送路の反対側に現れる法則があるようです。

ときどき“反射の影響が出るのはどのくらいの周波数からか?”と聞かれることがあるのですが“伝送路長が4分の1波長になる周波数からかな”と、答えていました。
が図 4を見ると、
“伝送路長が8分の1波長になる周波数から。場合に依っては16分の1波長から”と答えないといけなかった事が分かってしまいました(大汗)

例えば、10cmのストリップラインをFR-4基板に引いたときは・・・

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この周波数あたりから利得特性に盛り上がりが現れ、358MHzではピークとなるので、180MHz辺りの周波数では波形に影響が出てくると考えるべきです。


ところで、周波数特性が分かっていると言うことは、逆フーリエ変換すれば時間軸波形を求めることが出来るかもしれません。“反射”は周波数特性やフーリエ変換と言った線形解析では解けないというイメージがあるのですが、試してみたいと思います。

 

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この波形をフーリエ変換すると下記のような周波数成分に分解できます。

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この各周波数成分に下の周波数特性を掛け算して・・・

 

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その結果を逆フーリエ変換すると・・・下のような波形になります。

 
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図 5

 

同じ事を過渡解析で計算してみると、

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図 6

 

と成って、ほぼ同じ波形を得ることができました。注目すべきは、1個目のパルスです。
周波数特性+逆フーリエ変換を使った結果では1個目のパルスから歪んでいますが、過渡解析は最初のパルスは歪んでいません。どちらの結果を信じれば良いのでしょうか。

ひずみが発生する原因は多重反射です。パルスが伝送路内に入ってまだ時間が経過してない間は多重反射が起きていない(反射がまだ発生していない)ので、最初のパルスは歪まずに到達できるのです。この辺まで計算してくれる過渡解析の方がより現実に近い計算結果を示していると言えます。
しかし、過渡解析には時間がかかります。伝送路が複雑になると指数関数的に計算時間が増えていきます。反面、周波数特性(AC解析)+逆フーリエ変換は伝送路の複雑でも殆ど計算時間は変わらないです。最初のパルスを無視すれば、十分使えるのではないかと思います。

今回は“反射”を過渡解析を使わないで計算する方法を紹介しました。

次回は、反射+線形解析となると避けては通れないSパラメータに触れたいと思います。