<反射>

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昨年の11月、弊社のUSオフィスに出張した時のことです。打合せが早めに終わったのでUSスタッフが“アトラクションに行かないか?”と誘ってくれました。USオフィスはアリゾナ州フェニックスにあるので辺りは広大な砂漠です。その砂漠をジープで案内してくれるアトラクションに参加しないかとの事でした。時間になるとサスの硬い黄色のジープが迎えに来て、そこには口ひげをたくわえた初老のカウボーイが乗っていました。
オフィスからジープで30分も走ると、そこはもう広大な砂漠の真ん中、と言ってもサハラ砂漠のような砂の砂漠ではなく、岩と低木と、樹齢300年の大きなサボテンが点在する「西部劇の砂漠」でした。この初老のカウボーイはマイクと名乗り、しゃがれ声で砂漠の歴史や砂漠で迷わない方法を色々と教えてくれたのです。

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“この辺りは金が取れたのさ。それを求めてアメリカ中の亡者が集まってきたものさ”、“あの山の向こうが有名なジェロニモがいた村さ”、“方角を見失ったときはサボテンの花を見れば良いんだ。なぜか分かるか? 花は南に向いて咲くだろ”、“そこの岩を見ろ。コケが生えているだろ。コケは北側に生えるもんさ”などと話はつきません。
ふとしんみりとした様子で、“あれは3年前の事だった。道路から砂漠に2マイル入ったところで家族3人が道に迷って亡くなっちまったんだ。たった2マイルだぞ。俺のいうことを知っていたら死なずに済んだのによ”と。

僕たちの身の回りには便利なものが満ち溢れているので、自然からのメッセージを感じなくても生きていられます。でもその便利なものに頼っているうちに、大切な人からのメッセージも感じられなくなり、聞こえなくなってしまうのではないかと思うのです。不便で苦労するからこそ必死に何かを感じようとする、人が本来持っている自然の力を忘れないように、たまには「砂漠」に行くべきだなと思うのでした。

その事件が発生したのは、砂漠を引き上げてホテルに戻るときのことでした。
何が起きたかは次回と言うことにして、今回の技術ネタに行きたいと思います。

 

今回は“反射”について話してみたいと思います。

3年前、このBLOGの第1回目のネタは<インピーダンスマッチング>でした。そのときは感覚的な説明をさせてもらったので、今回は少し技術的に説明をしたいと思います。

“インピーダンス整合”とか“インピーダンスマッチング”と言う単語は高周波回路を設計した人なら一度は聞いたことがあると思います。整合とは“整い合う”なので、どことどこのインピーダンスが整うのかというと、信号源インピーダンスと伝送路の特性インピーダンスが同じであること、また、伝送路の特性インピーダンスと受信機の入力インピーダンス(終端抵抗とも言います)が同じであることを“インピーダンスが整合する”といいます。

伝送路の特性インピーダンスって何かという辺りから始めたいと思います。
Wikipediaよれば、
『特性インピーダンスは、一様な伝送路を用いて電気エネルギーを伝達するときに伝送路上に発生する電圧と電流の比率。』
さらに、
『単位長さあたりのインダクタンスがLの電気伝導体と、単位長さあたりの静電容量がCの絶縁体を組み合わせた損失のない均一な伝送路の特性インピーダンスZ0は次式で表される。』
  

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と書いてあります。簡単に言うと・・・
同軸やストリップラインはインダクタとコンデンサの組み合わせで出来ていて、その比率が特性インピーダンスになります。
特性インピーダンス50Ωの同軸にデジタルマルチメータを当てて抵抗を測定しても、どこにも50Ωは有りません(同軸の芯線の端と端を測定しても50Ωになりません)。


代表的な伝送路の特性インピーダンスを形状から求める計算式を下記にまとめました。
 

 
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図 1

 

 なお、式の中のεrは比誘電率で使う材料で決まります。


特性インピーダンスが(例えば)50Ωの伝送路に信号を入れると、どんな波形になるかを確認してみましょう。

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図 2

信号源V0は出力インピーダンスを可変できるように抵抗R1をつけています。
伝送路T0~T3は中間の波形も観測できるように4分割にしました。

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図 3

信号源インピーダンスR1=50Ω、終端抵抗R0=50Ωの状態で、High幅が2nsecのパルス信号を入力した結果です。ストリップラインの特性インピーダンスZo=50Ωで、その長さは200cmです。
(注意:長さが200cmのストリップラインに出会ったことはないですが、ここではオーバーに表現するために意図的に長くしました)
信号源V0から出力したパルスがR1を通過してストリップラインを伝播して、終端側端子Vout(青)には15nsecに波形が到達していることが分かります。

続いて終端抵抗R0を外して(R0=50GΩ)みましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図 4

終端抵抗が特性インピーダンスとずれたため反射が発生し、信号源側に反射波が伝播していきます。また終端抵抗がなくなった分、終端側の振幅Voutが2倍になっています。
しかし、不思議なことにストリップラインの入力Vinやストリップラインの中を通過していく波形V1~V3に振幅は半分のままです。半分と成っているのが気になるので、信号源側の抵抗R1を50Ωからずらしてみましょう


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図 5

上の図は信号源側の抵抗R1=40Ωとした結果です。ストリップライン入力電圧Vinが図 4より少し高くなっているのが分かるでしょうか? 信号源V0の出力Vsを抵抗R1とストリップラインが抵抗分割してVinを作っているのです。普通の抵抗とストリップラインは異質なものなのに、これらが抵抗分割の様に電圧を作っている事が私には驚きです。

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図 6

信号源側の抵抗R1が特性インピーダンスと異なるので、反射波はふたたび抵抗R1で反射し、進行波としてストリップラインの中にはいって行きます。抵抗R1を40オームとした場合はGNDより下に進行波が発生します(図 5参照)が、抵抗R1を60Ωとした場合はGNDより上に進行波が発生します(図 6参照)

それでは、信号源側の抵抗R1=1Ω、終端抵抗R0=50Gの場合はどの様になるかと言うと・・・
 

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図 7

終端側のVoutには+6Vや-6Vが発生する事に成ります。電源電圧=3.3Vなのになぜ?
波は反射するとエネルギーが減衰しないので、いつまでも反射を繰り返します。その結果、電源電圧を超えた電圧やGND以下の電圧が発生することになります。
この端子にもしもLSIなどの最大定格が低いデバイスが繋がっていたら・・・LSIが壊れたと騒ぐこととに成ってしまいます。

次回も反射と格闘してみたいと思います。

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このブログ記事について

このページは、dclueblogが2011年4月19日 17:56に書いたブログ記事です。

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