2010年11月アーカイブ

東京スカイツリーがもうすぐ500mの高さを超えようとしています。なぜそんなに高いタワーが傾かず垂直に立っていられるのか、感覚的に納得できません。来年の春には634mに到達し、高さ世界一の自立式電波塔になるとのことです。

先日、東京スカイツリーが完成すると電波塔としての役目を終える(と思います)東京タワーに行ってきました。東京タワーは中学の修学旅行以来なので実に32年ぶりに登ったことになります。

完成は昭和33年10月。当時は大型クレーンなど無いので、日本各地から集まった熟練の鳶職が手作業で組み立てたとのことです。展望台から見える鉄骨を止めているボルトからは、20mもの鉄骨をウィンチだけで地上200mに引き上げ、強風が吹く中、命綱もつけずに必死に作業をしていた若い鳶職の執念が伝わってきます。
設計は当時71歳の内藤多仲(ないとうたちゅう。「耐震構造の父」と言われる技術者)が担当です。計算機も無い時代に、どうやって地震や台風が来ても倒れない333mもの構造物の設計をしたのか、そしてその自信はどこから来ているのか、会えるものなら会って話を聞きたいです。

でも、なんとなくですが、その美しいスロープを保ちながら、しなやかに、無理なく自然に建っている姿を見て、絶対に倒れないような感じを受けるのは私だけでしょうか。


 

20101124_1_misaizu.jpg

 

美しく、暖かく、懐かしい東京タワーは、いつまでもその姿をとどめていて欲しいと思います。


右の写真は展望台からの夜景です。ここにも東京タワーがあるのをお気づきでしょうか?
この“地上の東京タワー”は夜しか見ることが出来ません。
偶然のいたずらだと思うのですが、高速道路の設計者が意図的に作っていたとしたら・・・

そんなことに思いを馳せながら、今日のネタに行きたいと思います。

 

“次回は実際にフィルタを計算で求めて・・・”の予定でしたが、フーリエ変換によって分かることなどをもう少し紹介したいと思います。

我々が扱うベースバンド信号は、ランダムなデジタル信号である事がほとんどです。
その特徴を調べるために、擬似的なランダム信号、PRBS(Pseudo Random Binary Sequence)を使うことが多くなります。このPRBS信号はFFを直列に接続して、その適切な中間部分から入力に帰還をかける回路、つまりLFSR(Linear Feedback Shift Register。図 1参照)で作ることが出来ます。

20101124_2_misaizu.png

 

 

 

 

 

 

 

上図(右)はPN7段(FFが7段直列に接続されてたLFSR)で作ったPRBS信号で、2^7-1=127ビットの長さで繰り返される1.0Gbpsの信号です。普通に波形を観測すると干渉の様子がはっきり分からないので、図 2の様に1周期(今回は1Gbpsなので1nsec)で折り返して重ね書きをして観測します。この波形が目(eye)の様に見えることから“アイパターン”と呼ぶことが一般的です。

20101124_3_misaizu.pngランダム信号の周波数成分を調べるために波形データ(時間軸波形)をフーリエ変換した結果を図 2(右)に載せます(横軸は周波数軸で、Logスケールです)。
一番低い成分は、このランダムデータの繰返し周期1GHz/2^7=7.81MHzで決まっています。ビットレートの1GHzやその整数倍の周波数成分は全く含まれていないことが、不思議な気がします。

20101124_4_misaizu.png

波形のDutyを少しいじってみた結果を図 3に載せました。Dutyが100%からずれると、1GHzやその整数倍の周波数成分が現れてきました。前回のBLOGで1010の繰り返しパターンのDutyをずらすと偶数倍の高調波が現れてきたことと関連がありますが、その理屈の説明はまたの機会に(汗)

 
このランダム信号がフィルタを通過するとどうなるか、計算してみましょう。

20101124_5_misaizu.png上図は2次のLPFで、高域カットオフ周波数は650MHz、ダンピングファクタは0.7です。
このフィルタに図 2の波形を入力した結果が右の波形になります。
ちょっとジッタが出ています。

20101124_6_misaizu.png

ダンピングファクタを0.2にしてピーキングを持たせると・・・波形は右の様にひどいことになります。伝送路を伝搬してきた波形は歪んだり、振幅が小さくなったりします。
この波形を出来るだけ整えて、雑音を取り去るためにLPFを使うことが多いです。
そのLPFはキチンとした周波数特性を持っていないと、波形を整えるのではなく、逆に歪ませてしまうことになります。

と、ここまではSPICEなどの一般的なシミュレータを使った設計の中で出会うので、フーリエ変換を意識することなく通り過ぎていけると思います。

しかし、次のようなフィルタが有った場合はどうなるでしょうか?

20101124_7_misaizu.png低い周波数帯に複数のディップがあります。そんなフィルタは無いかもしれないですが、何かの共振が低周波にあって、その影響を受けないとも限りません。
このフィルタを通過すると波形(右)には大きなジッタが発生します。

SPICEでこのシミュレーションをする時は、このディップを持ったフィルタ回路を先ず設計しないとならないです。これは結構手間がかかるし、位相特性も含めて完全に同じ特性にする事は不可能だと思います。しかし、フーリエ変換では計算したいフィルタの周波数特性を直接入力すれば良いので、得体の知れないフィルタの回路設計などをする必要がないです。
(SPICE系のシミュレータでも周波数特性を直接入力できるものもありますが
・・・高価です)

 
ちょっと失敗談を紹介したいと思います。
上のフィルタ特性の横軸をリニアにしたものをした下図に示します。
 

20101124_8_misaizu.png

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じフィルタなのですが、“ディップ”が殆ど目立ちません。左のほうにわずかに何か有るように見えますが、“測定系がいまいちだったので”と言われると、そうかなって納得してしまうと思います。
実はこれが測定系の問題ではなく、本当に“ディップ”があり、しかも低周波なのに波形の干渉に大きく影響を与えている事が分かるのに・・・3ヶ月かかりました(涙)

我々が扱うランダムな信号には低い周波数成分まで含まれていて、その低い周波数成分が失われる(または強調される)ことの影響は、想像以上に大きいことに注意が必要です。
なので、ベースバンド信号を扱う場合は「横軸はLogで見ること」がポイントなのです。

次回は、歪んでしまった波形を元に戻すにはどんなフィルタが必要か?について紹介する予定です。