<2012_新年の挨拶>

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新年明けまして、おめでとうございます。

弊社、ディー・クルー・テクノロジーズ(株)は今年の6月で創立10年目となります。
ここまで来れたのは、お客様、そしてパートナーの皆様のご愛顧とご支援によるものと、心より御礼を申し上げます。
また、昨年3月11日の東日本大震災被災された皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。
微力ながら、一日も早い復興のお手伝いをさせていただければと思っております。

弊社は創立以来、人間主義を基本として、人と人との繋がりと、感謝の気持ちを何よりも大切にしてまいりました。人と人との繋がりが共感を生みだし、その共感と感謝の気持ちが様々な壁を乗り越える原動力となって来たことを実感しております。
もし何かモヤっとした夢やご希望があれば、いつでも声をおかけください。私たちはお客様がモヤっとしている段階から一緒になって、その夢を共感し、育てていきたいと思っております。
そして、その夢を仕様化し、設計/試作/製品化するまでの長いお付き合いが出来ればと願っております。

今年、弊社は「拡大完勝の年」をスローガンとしてかかげました。そこには技術分野やビジネスの拡大だけではなく、人と人との繋がりをますます拡大し、お客様が真に求めるソリューションを提供していく決意を込めております。
なんなりとご用命いただき、引き続きご愛顧いただきますよう、宜しくお願い申し上げます。

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皆さんはどんなお正月をお過ごしでしょうか? 私の小さいころの正月と言えば、凧揚げや、こま回しをよくやりました。竹を割りヒゴを作る所は祖父に教わり、糸の張り方や、しっぽの付け方などは自己流でなんとかしようとしていると、見ていられなくなった父が口を挟んできたものでした。“凧の上側だけを反らせるんだ”“しっぽの長さは本体の5倍まで”などと理屈は説明してはくれませんでしたが懐かしく思い出します。 
出来上がった凧を揚げようと裏の田んぼに行くのですが、なぜか正月は昔から穏やかな日が多くて、冷たい北風が吹くのを楽しみに待ったものでした。うまく凧が揚がらないと、自分で色々と試行錯誤を繰り返します。左右のバランスなのか?糸目に位置が悪いのか? 何度も糸目を調整したり、竹ヒゴの節を丁寧に削って左右のバランスを整えたり・・・物理や流体力学は知らなくても何とかなったものでした。
つまり、想像力を働かせる事で流体力学のシミュレータを頭の中に作っていたのだと思います。

我々は仕事で計算機やシミュレータを頻繁に使います。しかし、その結果は限られた条件の中で、決められた通りの計算をしているだけなので、本当の姿を見せてくれているとは限らないのです。実際に動かしてみると材料や応力、振動など電子回路で扱わない要素が関連し、予想外の動作をすることがよくあります。計算機の能力やシミュレータが進歩して、今はかなり複雑な結果を予測できるようになってきました。だからこそ、普段から想像力を磨いて頭の中のシミュレータを高性能化しておくのが大事なのではないでしょうか。

私の今年の一字は“働”です。周りの事や他への想像力と感性を高め、人のために動いて“はた”を“らく”にすると言う“はたらく”の根本に立ち戻って、精進していく決意をこめてこの一字を選びました。

本年もお客様のご愛顧にお答えすべく日々前進してまいりますので、引き続き、叱咤・激励・ご鞭撻のほど、どうぞ宜しくお願いいたします。

季節の移り変わりは速いもので、うるさく鳴いていた鈴虫も冬支度を整えるのに忙しいのか、すっかり静かになってしまいました。虫と言えば虫の目線から撮った写真があるのをご存知ですか?

栗林 慧(クリバヤシ サトシ)さんと言う写真家の作品なのですが、虫の目線の映像を撮りために独自のレンズを考案して、「アリからみると」という題名の写真集を出しています。
この写真を見ると妙に懐かしくなります。きっと子供の頃、この目線で虫と遊んでいたからなのかもしれません。

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この前、実家の近所のおじさんが亡くなって葬式に出るために帰省しました。もうだいぶ寒くなっていて、コタツが大活躍していました。
近所のおじさんと言っても、私には昔の記憶があまりなく、父の葬式に来ていただいたのをやっと思い出したくらいでした。
朝、実家で喪服に着替えて出棺を手伝うためにおじさんの家に向う時、小さい頃良く遊んだ道や川や田んぼの脇を通っていったのですが、なんて狭い小さな世界だったんだろうとちょっとビックリしてしまいました。私の記憶では、そのおじさんの家は結構遠くて、田んぼの脇の道を延々と歩いて、すごく長い坂道を登って、やっと着く家だったのですが。あんなに広くて大きな世界が、実はこんなに小さくてわずか5分で通り過ぎてしまうような世界だったとは。おじさんの家の柿の木がこんなに低くて、登らなくても手が届くとは。

ここで遊んでいた頃は身長が120cm位しかなかったからかも知れません。大人の目の高さからでは目線が違うと言えばそうなのですが、身長が伸びて目線が高くなってしまった事で、何でも遊びや冒険にしてしまうワクワクする心や、全てに興味や不思議を抱いた純粋な目を失ってしまっている自分がいる事に気が付いたのでした。

大人に成って(どの辺りから大人かは分かりません)、経験や知識が増えてくると、全ての事を知っているかのような錯覚に陥ってしまいます。「それは結果が分かっているから、やらなくても良いだろう」、「あれと似ているから、結果も同じだろう」など、実際にやってみることを止めてしまっている事が多くなってきています。子供の頃の身長にはもう戻れませんが、知識や情報に頼るのではなく、自分の体で実感して感動する事を大切にしていきたいと思います。

 

前回は電源フィルタの設計は意外と難しくて、雑音を除去するはずの電源フィルタが、逆に雑音や過剰な電圧を発生させてしまう回路になってしまう事があると紹介しました。

今回はその対策を考えてみたいと思います。

前回の回路は負荷に流れる電流のピークを10mAとしていましたが、最初の電流でいきなり電圧が1V付近に降下しています。

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図 1

 

これは、コンデンサCf1の値が150pFと小さいために急激な電流の増加に電源電圧が耐えられないためです。
つまり、急速な電流の変化にはインダクタは応答できないので、コンデンサが電流を先ずは供給して頑張り、あとでインダクタからゆっくりと電流を供給してもらうといった動きをするのですが、最初の部分で頑張りが足りないと電圧が降下してしまいます。
コンデンサがどのくらい頑張れるかは、次式の計算で求めることが出来ます。

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電圧降下は流れる電流を積分してコンデンサの値で割れば良いと言うことなので、計算してみると・・・

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の電圧降下が発生する事に成ります。

 

 

従って、150pFは10mAが40nsec流れるといった負荷には耐えられないということです。

ではどうするかと言うと、コンデンサの値を大きくするのが一番簡単です。
150pFで2.67Vの電圧降下だったので、特性に影響のないところまでと言うと・・・2桁ずらして、15000pFで0.0267Vの電圧降下であったら特性に問題はなさそうです。

早速変更して計算をして見ましょう。前回と同じように1MHzをカットオフ周波数にするためのインダクタの値を計算してみると下記の様になりました。 

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1.7uHは一番系列で近い値の1.8uHとしました。

 

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図 2

電圧効果は無くなりましたが、代わりに電源が振動するようになってしまいました。
電圧源からの周波数特性を確認してみると・・・・

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図 3

案の定、ピーキングが発生していました。
このままではリンギングが条件に依ってはひどくなり、場合に依っては発振してしまう恐れがあります。このピーキングは電源フィルタのインダクタとコンデンサの共振に依って発生しているので、この共振のQを出来るだけ低くすれば良いのですが、その計算は結構面倒な計算式となり、途中で挫折した方もいるかもしれません。そこで、もう少し簡単な方法を紹介したいと思います。

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図 4

まず上の図の様に電源から見たインピーダンスを、回路を組み立てながら考えてみます。

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図 5

最初は抵抗だけしかないので、1KΩが見えているだけです。

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図 6

コンデンサCf1が並列に付くと、並列なので低いインピーダンスが見えます(優先されます)。コンデンサと抵抗のインピーダンスが等しくなる周波数は、R0=1KΩ、Cf1=15000pFの場合、

 
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となります。

 

 

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図 7

最後にインダクタLf1を直列に繋ぎます。今度は直列なのでインピーダンスが高いほうが見え、右の様に再びインピーダンスは高くなります。
ここで大事なのがコンデンサとインダクタがぶつかり合うポイントです。Lf1=1.8uH、Cf1=15000pFの場合、このポイントの周波数(つまり、共振周波数)は

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となります。

 

 

この辺は教科書にも載っているので、知っている方がほとんどだと思います。
でも、ここからがミソです・・・

インダクタとコンデンサがぶつかり合ったポイントのインピーダンスは、Lf1=1.8uH、Cf1=15000pFの場合、

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となります。

 

 

インダクタとコンデンサの特性が直接ぶつかり合うと“共振”を起こします。
これが、図 3のピーキングの原因なので、共振が起きないように、つまりインダクタとコンデンサが直接ぶつからないようにしてやれば、ピーキングも減る事に成ります。

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図 8

例えば、上の様にコンデンサC0に直列に抵抗R1を入れて、インピーダンスが抵抗値より下がらないようにすることで、直接インダクタとぶつかり合わないようにしてみます。
Lf1=1.8uH、Cf1=15000pF、Rf1=15Ωとして計算した結果は次の様になります。

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図 9

ピーキングは大幅に減りました。それでは負荷を接続してみましょう。

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図 10

負荷電流に依って少し電源が変動しますが、大きな電圧降下も振動も無くなりました。
これでやっと電源フィルタの完成です。。。といいたいのですが、現実の電源フィルタにはもう少し工夫が必要です。それは寄生素子の影響です。
次回は寄生素子の影響を加味して、電源フィルタを完成させたいと思います。

先日、妻に誘われて「工場ナイトツアー」に行ってきました。
横浜みなとみらいのぷかり桟橋を出て、京浜工業地帯の夜の工場を船で巡るツアーです。
何が嬉しいのかと言うと、夜の工場がライトアップされていて意外と綺麗なので最近静かなブームになっている(妻談)との事です。
コースはぷかり桟橋から大黒ふ頭の左側を抜けて、京浜運河を羽田方面に向って進み、左側に並ぶJFEスチールや昭和電工、出光興産などの工場内のプラントを船上から間近で見て、ぷかり桟橋に戻ってくるコースです。所要時間は約2時間、フリードリンク1本付。

19時出発なので、遅れないように早めにぷかり桟橋へ行くと、知らなかったのですがここからは色んなクルージングツアーが出ていて、派手な衣装のカップルやコンパニオン(?)などでごった返していました。時間になったところで、係りのおじさん(船頭さん?)から集合の声がかかり、ツアーの概略と注意事項を聞いて船へと向いました・・・この船、タグボートでは・・・少なくとも観光用の船の周りにタイヤは並んではいません。タグボートに乗り込みフリードリンクもらい、屋根の無い最後尾に座ると、いよいよ出発です。みなとみらいの観覧車を後に、暗い工場地帯に向ってタグボートは結構な速さで進んでいきます。

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エコロジーが叫ばれている中、なぜプラントをライトアップしているかというと・・・
もちろんナイトツアーで訪れる観光客のためではありません。それは「監視するため」だそうです。あらゆるセンサーが付いていて温度や圧力、電力や放射線などプラントの状態は隅々まで常に監視しているだろうから、なにも照明でライトアップしなくても監視できるのではないかと思われるかもしれません。僕もそう思いながらカメラのシャッターを切っていると「人が見るために明かりを点けているそうです。どんなにセンサーや機械が発達してもやっぱり最後は人の目が一番だそうです」と、船頭さんがゆっくりと船の向きを変えながら教えてくれました。モニターがずらっと並んだ監視室でそれを睨む事を仕事とする人がいるんだと初めて知り、世界の最先端テクノロジーを結集してあらゆる監視技術を注ぎ込んだ最新鋭のプラントでも、どんな些細な異常も絶対に見逃さないという職人の信念が支えているのだと思い知らされました。

 

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遠くにみなとみらいの灯りが見えてきました。ほんの2時間足らずのツアーでしたが、暗い海の中で港の明かりが見えるのは、ホッとするものです。灯りがともり、便利な生活を当たり前の様に過ごしていると、その裏で陰となって自分のやるべき事をしっかりとしている人達がいる事を忘れがちです。この「お陰様」への感謝を決して忘れては成らないと改めて強く感じた夜でした。

 
今回は電源に入れるフィルタについて紹介したいと思います。

電源になぜフィルタなどと面倒なものを入れるかと言うと、電源が理想的ではないからです。シミュレーションで使う電圧源や電流源はこの世の中にはありません。実際の電源は電圧や電流だけではなく出力インピーダンスも有限で周波数に依ってその値も変わります。また、色々な雑音が混じっています。

特にほんのわずかな電圧や電流を増幅するアンプにとって、電源に混じっている雑音は信号との区別がつかなくなり、致命的になります。
また、ややこしいのは雑音を出すのは電源だけではなく、自分自身でもあると言う事です。つまり、出力インピーダンスが有限の電圧源は、負荷に流れる電流が増えると電圧降下が発生して、これが負荷にとっては雑音になります。デジタル回路で扱うデータに応じてヒゲのようなスイッチングノイズが出るのは、負荷電流が変わっていることが発端になっているのです。
そんなわけで、電源入れるフィルタは電源が出す雑音だけではなく、自分自身が出す雑音も取り除くことも目的なのです。

では実際に電源フィルタを作ってみたいと思います。
まずは回路の負荷を1KΩと想定します。3.3V電源であれば3.3mAが流れている事になります。デジアナ混在のSoCなどに使われているBGRなどの基準電源と思ってください。
次に電源からの雑音をカット(除去)する周波数を1MHzと決めます。

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図 1

 

フィルタの方はLCの2次のLPFとします。共振周波数fcは次式で表されるので、

 

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共振周波数fcを10MHzとしたときのフィルタ定数Lf1,Cf1の組み合わせを計算してみます。なお、インダクタLf1は(1)式から次の様に計算できます。


 

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これらの組み合わせを上の回路図に適用して、電源V0を信号源として、OUTの周波数特性を計算してみると・・・

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図 2

 

組み合わせに依って、ピーキングが発生しています。ピーキングの有無や量は、負荷のR0=1KΩに対して、共振する周波数のインピーダンス

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が大きいか小さいか、また負荷に対して並列に接続されているのか直列になっているのかにも依ります。
この辺りは後で詳しく説明することとして、フィルタの値を仮に決めたいと思います。
コンデンサは200pFより少し小さい方が良さそうなので150pFにします。これを使って計算で求めたインダクタは170uHなのですが、部品としては系列のある180uHとします。

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図 3

この回路の周波数特性と電源の起動応答を見てみると次の様になります。

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図 4

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図 5

これで周波数特性も過渡応答も確認できたので、これで完了!と行きたいのですがまだ負荷電流変動が残っています。
前の回路図の負荷変動用電流源I3に下記のようなランダムな負荷電流を加えてみます。

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図 6

ランダムな負荷電流は10mAピークとしましたが、上の図の様にフィルタ出力電圧OUTは大きく低下して1V付近まで落ち込んでしまい、このままでは回路は誤動作してしまいます。また、負荷電流が減ったとき、電源電圧より高い電圧が印加されるので、デバイスが破壊してしまう可能性もあります。

このように電源フィルタの設計は意外と難しく、電源回路や負荷となる回路の動作を理解し、これらに合わせて最適なフィルタの型や定数を設計しないと、雑音を除去するはずの電源フィルタが、逆に雑音や過剰な電圧を発生させてしまう回路になってしまい、悪くするとデバイスを破壊してしまう様な惨事になりかねません。

次回は上の回路をどう直していくかを紹介したいと思います。

<反射(その6)>

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夏真っ盛りです。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
こう暑い日が続くと水族館に行きたくなりませんか?大きな水槽をゆったりと泳ぐ魚を見ると、なんとなく涼しくなるような気がします(本当は冷房が効いているためなのですが)。
子供がまだ小さい頃、その強い要請に負けて良く出かけました。江ノ島水族館、油壺マリンパーク、品川水族館、八景島シーパラダイス、葛西臨海水族園・・・

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水族館に出かけると必ず目にするのはイルカのショウです。調教師が手を挙げると一斉にイルカがジャンプをするのは、調教師が口にしている笛から出る合図の音を聞いてタイミングを取っているのだとご存知と思います。でもこの合図の音は非常に高い周波数(超音波)なので、人の耳には聞こえません。
イルカはこの超音波が聞こえるだけではなく、超音波を発射する事も出来ます。頭の部分が空洞になっていて、ここで共鳴させた超音波を狙ったものに当て、その反射を下あごで拾って相手の距離や硬さなど様々な情報を聞いて(見て)いるとのことです。漁をする時は小魚にこの超音波を集中させ、衝撃で失神させてからパクッといくそうで、高性能な魚探知機 兼 衝撃銃を持っている事に成ります。

イルカや鯨など群れで生活する動物は、互いのコミュニケーションに音を使うことが多いとのことです。水中で光はすぐに減衰してしまうのですが、音はかなり遠くまで届くことが理由だそうです。つまり、ハワイ島沖の鯨はオホーツク海に帰ってしまった彼女に、次の待ち合わせ場所を確認している と言うことです。

波を使って通信することはスマートフォンと変わりありませんが、イルカや鯨はこの充電の要らない便利な携帯電話を何万年も前から使っていたことに・・・驚かされます。

 

 

反射を使って何かを調べると言うと・・・TDRという測定方法があるのをご存知ですか?

“TDR”をGoogleで検索すると・・・ホテルご予約の案内。東京ディズニーリゾート・・・の略でもあるのですが(汗) ここではTime Domain Reflectometry の略です。
直訳すれば「時間軸の反射測定」となります。今まで反射の波形を時間軸で説明してきたのに何をいまさらと思われるかも知れませんが、この測定はSパラメータと同じく反射を測定する方法のひとつで、反射がどこで発生しているか、その場所を突き止めることが出来ます。

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http://www.helmut-singer.de/stock/561555229.html

この測定器はHP社(今はAgilent Technologies社)のサンプリングオシロスコープです。
(これも高価で、なかなか使えなかったです)
このオシロスコープにはTDR測定用の端子があって、ここに同軸ケーブルを経由して評価ボードを接続します。そうすると評価ボード(非測定物)のどの辺りで反射が起きていて、しかもそれが特性インピーダンスより大きいのか小さいのかもわかってしまうと言う優れものです。
評価ボードのコネクタ部分が悪いのか、LSIの入力が駄目なのか、ストリップラインの曲がっている場所で反射してるのか をオシロスコープの波形を見ればすぐに分かり、しかも、指で触るとリアルタイムに波形が変化したので、非常に直感的で、まさに体で感じることが出来る優れた測定方法です。まだ駆出しの頃、反射しているポイント指で探って、そこに指と同じ回路を追加して反射の影響を出来るだけ減らすことと格闘していました。
ちなみに私の人差し指の等価回路は、10pFと5.1Ωの直列でした。

インピーダンスの整合を調整する方法にはスミスチャートを使う方法(別の機会に紹介したいと思います)があります。しかしこの方法はRF回路などインピーダンスを整合させる周波数範囲が狭い場合には非常に有効ですが、NRZ信号などの様に信号成分が広帯域におよんでいて、広い周波数範囲でインピーダンス整合をとる場合には有効とは言えません。
その点、TDRは非常に広い周波数範囲でインピーダンスの整合を調整するのに都合の良い測定方法です。

TDRの測定原理は非常に簡単です。非測定物(なぞのモジュール)に向かって非常に立ち上がり時間の短いパルスを送出し、その反射波を観測するだけです。

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図 1

あるモジュールの端子に同軸ケーブルを接続してTDRを測定した結果、次の様な波形が出てきたとします。

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図 2

つまり、V(vs):青の信号を送信した結果、信号源のインピーダンス整合をする抵抗RsにV(vin):緑の波形が現れたとします。実はこの波形から色んなことがわかるのです。

    (1) 波形の落ち着いた場所が中心(0.5V)から少し上にずれている。
    これは、終端抵抗が信号源インピーダンスから少し大きめになっていることを意味します。長い時間その値を保っていられるのは直流に近い成分であることを意味しているので、直流結合で接続されている終端抵抗が50Ωより10%ほど大きめになっていることが分かります。LSI内に終端抵抗を実装した場合は有りうることです。

    (2) 終端される前に一旦、電圧が低くなっています。短い時間だけ、つまり高周波でインピーダンスが低くなると言うことは・・・信号線とGNDの間にコンデンサが入っていることを意味します。つまり、終端抵抗と並列にコンデンサが付いていることが分かります。

    (3) 少し手前に来ると、インピーダンスが高くなっている部分があります。短い時間だけ、つまり、高周波だけインピーダンスが高くなると言うことは・・・信号に直列にインダクタが入っている事に成ります。原因はモジュールを空けないと分かりませんが、信号の接続VIAかもしれません。

    (4) 更に手前に戻って来ると、再びインピーダンスが低くなっている場所があります。ここにも信号とGND間にコンデンサが入っていることが分かります。この部分はモジュールの入り口なので、コネクタと接続するためにボードのパターンが太くなっているのかもしれません。

    (5) インピーダンスがずれている間の時間がおよそ1.4nsecで、2箇所が同じ位の間隔になっていることが分かります。もし、モジュール内のボードがFR-4(ガラスエポキシ基板の代表的な例)で作られているとすれば、伝播遅延時間は70psec/cmなので、1.4nsecは20cmで作られる事に成ります。反射波は行って帰ってきていますので、ボード上では約10cmの距離に換算できます。

     

なぞのモジュールを開けた結果は次の通りです。

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ほぼ、波形から推定した結果を同じ回路となっていることが分かります。
なおTDRの更に詳しくは、下記を参照してください。
http://cp.literature.agilent.com/litweb/pdf/5989-6185EN.pdf

 

TDR測定は、中を触ることの出来ない回路(例えば、モジュールやLSIなど)のインピーダンス整合がどこでずれているかを外部から知ることが出来るので、非常に重宝な測定方法です。
反射波を使った方法は他にもあり、超音波を発射して、反射波を解析することで反射を起こした物体の状態(硬さなど)や距離を求めて映像にする超音波診断装置は、良い代表例だと思います。
 

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http://ja.wikipedia.org/wiki/超音波検査

ここまで書いて、イルカは超音波診断装置を何万年も前から使っていたのだと、気が付きました(汗)

光を捉えると言う点では人も目も優れていて、ろうそくの光でも夏の海岸でも本が読めます。
しかし、自然に入ってくる光(情報)を見るだけではなく、自ら音波(言葉や行動)を発して、その反射(対話)を感じることで、目では見えない相手の内側や本質や大切なものが見えてくるのだ と教えられた気がしています。

    <反射(その5)>

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    テレビのアナログ放送が終了するまであと1週間をきりました。アナログ放送が無くなると聞くと古いアナログの時代は終わりと言うイメージを抱く方もいると思います。でも、デジタル放送と言っても電波はアナログだし、液晶画面を駆動するLSIもアナログです。“それでもアナログは無くならない”は、まだまだ頑張ります。

    もう少しだけカメラの事を話したいと思います。フィルムカメラはフィルムの装填がものすごく面倒です。

    1. カメラの裏ブタを開けます。
      真ん中にシャッターが見え、左と右に部屋があります。
    2. 左の部屋に撮影前のフィルムを入れます。
      フィルムはパトローネという入れ物に入っていて、明るいところでも感光しないようになっています。
    3. フィルムを引き出して、シャッターの上を経由して右の部屋にある巻き取る軸にセットします。
    4. ふたを閉じて何枚か空撮りし巻き取りレバーを操作して、既に感光してしまっている部分を右の軸に巻き取ります。

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    フィルムは36枚撮りが最大だったので、この操作を出来るだけ早く、そして確実に行わないと目の前を子供が走り抜け、絶好のシャッターチャンスを失う事になります。保育園の運動会の前夜、フィルム装填の練習をしたものでした。

    フィルムで撮った写真と、デジカメで撮った写真を見比べるとなんとなくフィルムで撮った写真の方が柔らかい感じがするのは私だけでしょうか。写真が古かったり、ピントがボケているわけではないのですが、フィルムの写真はなんとなく“ほっ”とします。
    フィルムは光を感じる粒子を利用して画像をフィルム上に残します。この粒子は大きさも配列のバラバラで全く規則性がありません。一方でデジタルカメラのCCDは光を感じる小さな素子が整然と並んでいます。デジタルカメラでもの凄く細い髪の毛を撮影したとき、たまたまその髪が整然と並んだ素子と素子の間に入ってしまったら・・・その髪は撮影できない事になってしまいます。フィルムの場合、光を感じる粒子がランダムに並んでいるので、どんな角度に細い髪が入っても、反応する粒子が全く無くなってしまうことはありません。必ず細い髪の毛が撮影できるのです。
    網膜の視神経もランダムに並んでいることが、フィルムの写真を見たときに“ほっ”とする理由なのかもしれません。

    ランダムと言うとなんとなく雑であったり信頼性に欠けるような印象があります。しかし、逆にそのランダムをうまく利用すれば、高い信頼性を得ることができるのです。

    いろんな個性の人が集まり、その個性をお互いに認め合い活かす事が強い組織を作るキーであり、まさに弊社企業スピリットの「人を大切にする」こそが基本なのだと再度確認しました。

     
    今回もSパラメータについてもう少し紹介したいと思います。

    S11が入力側(左側)の反射量を示すなら、S22は出力側(右側)の反射量を示します。
    そしてS21が入力から出力への(左から右への)電力伝達量を、S12は出力から入力への(右から左への)電力伝達量を示します。

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    図 1

     

    Sパラメータの中で先ず注目するのは、S21ではないでしょうか。
    非測定物の周波数特性がどうなっているか、ピーキングは無いか?などを先ず確認する時に使います。そして次に注目するのがS11やS22ではないかと思います。

    S11やS22に注目する理由は、実際に触ることが出来ないLSIの内部の波形を推定すること出来るからではないでしょうか。


     

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    図 2

     

    例えば、実際の評価でなぜかエラーを発生してしまうLSIがあったとします。寄生素子の影響であることはなんとなくわかっているのですが、どう調べたら良いか分からないこともあると思います。そんな時、S11が原因究明の手助けになってくれます。
    まずLSIの等価モデルを想定します。上の図の様に最も簡単なものを使い、インダクタL0はボンディングワイヤーを、コンデンサC0はPADと入力トランジスタの寄生容量を等価するものとします。
    PAD容量や入力トランジスタの寄生容量はデバイスの特性なので、デザインマニュアルなどを参照すればある程度の数字を得ることができると思います。問題なのはインダクタで、ボンディングワイヤーの長さ(特にループになっている分)や、PKGの端子がどの程度のインダクタになっているかを知るには骨が折れます。
    上の回路で、Cp=1pFとしてインダクタLpを変化(2n, 5n,10n,20nH)させたときのS11を計算した結果を下に示します。


     

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    図 3

    等価回路を良く見ると、L/Cの直列共振回路となっています。なので、共振周波数では
    整合抵抗R0に非常に低いインピーダンスが並列に入っている事に成ります。そのためS11は全反射(入力した電力の全てを反射する)し0dBを示す事に成ります。もし、実測したS11に全反射となる周波数があれば、その周波数を合わせるようにインダクタを計算して求めることが出来ます。
    しかし、S11が全反射する周波数から寄生インダクタを求めても、なぜエラーが発生するかの説明は出来ません。そこで、等価回路のVout端子の周波数特性を確認してみます。


     

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    図 4

     

    S11の全反射する周波数で、ピーキングが発生していることが分かります。
    このまま過渡解析をしてみると・・・

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    図 5

     

    大きなリンギングが発生して、エラーになっていることが分かります。更に厄介なことはLSIの入力波形を見ると分かります。

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    図 6

     

    LSIの入力波形には大きなリンギングは現れていません!
    つまり、このLSIを評価するときに、LSIの端子Vinをプローブで観測しても上の図の様に“少しリンギングが有るけど、エラーするほどではないので、入力部には問題はない”と済ましてしまうと、永遠にエラーするなぞが分からないままになってしまいます。

    簡易的でも、入力部の等価モデルとS11の測定結果を比較することで、実測できない内部の波形を推定することが出来ます。

    ところで、LVDSなどの高速インターフェースでは整合抵抗をLSIの中に搭載することが一般的です。上の回路例では、整合抵抗R0はLSIの外部に実装していますがこれをLSI内に移動した場合の効果はと言うと・・・

     

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    図 7

     

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    図 8

     

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    図 9

     

    その効果が圧倒的なのは波形(図5が外部整合、図9が内部整合)を見れば一目瞭然です。

    インピーダンス整合用の抵抗R0は、終端抵抗とも呼びます。そこ場所で今までの伝送路が終わるのでこの名前なのだと思うのですが、やはり終端抵抗は最後につけないとその効果が出ないと言うことだといってしまえばそうなのですが・・・寄生容量やインダクタや伝送路のミスマッチ、歪を全て背負って、終端する抵抗って偉いと思うのです。

    次回はこのSパラメータと他のパラメータの関係について紹介していきたいと思います。

    <反射(その4)>

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    各社スマートフォンの夏モデルがそろそろ出始めてきています。最近は800万画素!?が携帯電話のおまけに入ってしまうのでカメラを首から下げている人が少なくなりました。昭和の日本人のイメージとして、メガネをかけてカメラを首から下げているのが定番だったのですが、これからはスマホを指でピってしているのが定番になるような気がします。

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    これは30年くらい前、夏休みに家事(農作業)を手伝ってやっと手に入れたカメラです。フィルム式のカメラですが、たまに写して“フィルムの方がやっぱ色が深い”などと言ってると妻に“どうせ撮るなら、どっかに連れてってよ”と言われる今日この頃です。

    “M90”と言う表示が見えるでしょうか。これはマニュアルの“M”ではなく”メカニカル“の”M“です。これを使うと電池が全く無くても1/90秒の機械式シャッターで写真を撮ることができます。今では当たり前ですが、当時のカメラも電池が無くなってしまうと電動式シャッターが動かなくなり写真が撮れなくなるカメラが主流でした。電池を切らしてしまうのは、使う側のミスなので仕方ないと言えばそうなのですが、「その瞬間はもう二度と見ることが出来ない瞬間なのかも知れない。そんなとき、たとえ1/90秒の固定とはいえ、メカニカルシャッターがあれば、何かをフィルムに残すことが出来るかもしれない」そんな開発者の思いが“M90”には込められている様な気がします。このカメラメーカーはライバル会社がさっさと電動式シャッターに変えても、いつまでも機械式シャッターを捨てずに搭載しつづけています。
    (今の主力はデジタルカメラとなっているので、ごく一部の機種に限定ですが。)

    最近のデジカメで電池がなくなると“電池がなくなりました。充電してください”とメッセージが出るものがあります。でも、そのメッセージを表示するためのバッテリーが残っているなら、いま沈み行く綺麗な夕日を撮るために、あと2回、いや1回でいいから動いて欲しいと強く思います。

    設計する側はサービスのつもりでも、使う側にとって見れば余計な事に成ってしまっていうことって案外多いのではと思います。作り手の勝手な思い込みではなくて、使う側のことをどれだけ真剣に想像しイメージし、思いを馳せたかを、その製品にしっかりと刻み込むことが、お客様との強い信頼を生み出していくんだなと思います。

     

     

    高周波の回路設計を行っていると、Sパラメータに必ず出会います。なぜSパラメータと出会わないといけないかと言うと、集中定数では扱えなくなってしまったからです。
    前回の様に高周波信号は反射を起こします。進行していくものと反射に依って逆方向に進むものとが有り、これらの表現の一つの方法がSパラメータです。

    20110628_2_misaizu.PNG

    http://www.microwaves101.com/encyclopedia/sparameters.cfm

    図 1

    図 1の様に回路網に対して左から入力される信号と出て行く信号、また右側にも入力される信号と出て行く信号が定義されています。つまり、右側も左側も進行波と反射波を考えているという事になります。
    (注:図でa1とb1は別の端子に成っていますが実際は一つの信号線です。入力される信号と出てくる信号を区別するために2本に分かれているだけです)

     

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    私がSパラメータ(以下Sパラ)に出会ったのはHP(Hewlett Packard)のネットワークアナライザーに触ったときでした。高価な測定器だったので、めったに触ることが出来成ったのですが、どうしても満足いく特性が得られず“Sパラを測定してみろ”と先輩に言われて恐る恐る触ったのがきっかけでした。

    横軸が周波数になっている測定器との始めての出会いでした。

     

     

     

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    実はSパラメータは日本人の黒川兼行さん(左の写真)が考案したものであったことをご存知でしょうか?
    1965年IEEEに発表された“Power Waves and the Scattering Matrix”と言う論文でSパラがこの世に発表されたとのことです。http://www.microwaves101.com/encyclopedia/halloffame3.cfm

     

     

    SパラのSはScattering(散乱)からきています。
    何が散乱しているのかと言うと・・・

    Wikipedia(http://ja.wikipedia.org 『Sパラメータ』)に依れば、 

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    と書いてあり、散乱行列と言うのを使うので、Sパラと呼ぶのだと分かります。
     
    正直いうとSパラは私にはまだ分からないことの方が多いです。
    SPICEでは電圧や電流を扱うことに慣れているのですが、なかなか電力の方向まで扱うことが少ないため、イメージがつかみにくい事が原因ではないかと思います。

    そこでSPICEでSパラを扱うことが出来る回路を紹介したいと思います。

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    図 2

     

    上の回路は端子PORTに接続された回路網のS11を計算して端子S11に出力してくれる回路です。
    回路網で発生している電圧(端子PORTの電圧)を依存電源E0で検出し、信号源インピーダンスR0で発生している電圧を依存電源E1で検出して、前者の電圧から引いているだけです。


     

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    図 3

     

    今まで使っていた伝送路のS11を計算してみましょう。終端抵抗の値Rtmは50Ωです。

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    図 4

     

    低周波ではS11は低い値を保っています(つまり、反射が少ない)が、高周波に成ると
    終端抵抗と並列に入っているコンデンサC0(10pF)の影響でS11が増加します。

    図 1から


     

     

    と表されます。もし、a2=0ならば(つまり、回路網の右側から電力が入力されない時)

     

    20110628_9_misaizu.PNGとなって、反射係数と同じ計算式となります。つまり、

     

     

    20110628_10_misaizu.PNG

     

     

     

    と書くことが出来て、S11が分かれば回路網のインピーダンスZlがわかる事に成ります。
    例えば200MHzのZlは終端抵抗Rtm=50Ωと10pFとの並列なので、

    20110628_11_misaizu.PNG

     

     

     

     

    に成っているのでS11は、

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    となり、シミュレーションがほぼ正しいことが分かります。

    伝送路の右から2つ目の特性インピーダンスZoを意図的に(製造誤差等を想定)60Ωにした結果も図 4にプロットしました。
    この結果がネットワークアナライザーの実測とどのくらいの精度で一致しているかの確認はできないですが、大きなずれはないように思います。

    高周波の世界でも、相手に伝えたいことがほんとに伝わるのには時間がかかることや、今までの環境と異なる環境にはスムーズに入っていけない事など、人の社会と同じようなことが起きているのが非常に興味深いです。

    次回もこのSパラの世界を紹介する予定です。

    <反射(その3)>

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    D-CLUEは今月、第9期を迎えることができました。これも変わらぬお客様のご愛顧と、様々なパートナー様のご協力/ご支援のたまものと、厚く御礼申し上げます。

    どんなに優れた技術やどんなに大きなビジネスでも、支えるのは人と人との関わりです。
    この第9期は、ご愛顧頂いた感謝の気持ちを情熱に変え、お客様にさらに感動していただくことで、恩返しをさせていただければと思っております。
    なお一層の御引き立てを、どうぞ宜しくお願い申し上げます。


    今年も恒例の社内旅行(沖縄)に行くことができました。
    これもひとえに社長を初め、様々な準備を自発的に進めていただいたスタッフの皆さんのお陰です。本当にありがとうございました。

    今年はちょうど梅雨入りと重なっていたため、天気が心配されましたが、強力な晴れ男がいるためか、梅雨の晴れ間のすごい良い天気となりました。

     

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    沖縄のビールと言えば、オリオンビール。工場が名護市にあって見学できるとのことだったので、ちょっと寄り道をしました。(もちろん試飲もありと聞いていたので・・・)

    あまり大きな看板も無く、少し不安になりながらレンタカーのナビを頼りに住宅街の細い道を抜けると大きなタンクが何本も見えてきました。受付を済ませ、待っていると案内の女性が現れ、工場の施設の説明だけではなく、オリオンビールの歴史から新作のビールまで丁寧に説明してくれました。初めて知ったのですが、オリオンビールの工場はこの名護工場のみで、世界中のオリオンビールは全てここから出荷しているとの事です。
    見学の中でビールにフタをする機械が目にも止まらない速さで回っていて、その機械に水をかけて冷やしているのが目に留まりました。彼女の説明に依れば、酵母菌にとって一番良い温度は15℃で、ビールにとって一番良い状態のまま密閉するために、水で冷やしながらのフタを締めていくのだそうです。
    昭和32年、米軍の統治下という中で、沖縄の若者に“やればできるんだ”を見せたくて、あらゆる苦難を跳ね返して頑張った創業者の強い思いが今でも生きていると実感しました。
     

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    オリオンビール

     一通りの見学の後の出来立てのオリオンビールは格別でした。

     

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    恒例の大宴会です。今年も島歌ライブで全員が大いに盛り上がりました。
    人と人が同じ場にいて、同じ音楽を聴いて、同じ空気を吸って、同じ時間を過ごして、同じ事に感動して・・・この“ライブ”こそが心を満たして、更に団結を深くしてくれます。

     

    前回までは“反射”がどの様に波形に影響を与えるか過渡解析を使って説明をしてきました。今回は小信号解析(AC解析)も使ってもう少し反射について説明したいと思います。

    “反射”と言うと進行する波と反射する波があり、それらが重なり合うので、なんとなく線形解析が出来ないような気がするのですが、どうなるか確認してみたいと思います。

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    図 1

     

    前回使った回路を図 1に示します。信号源インピーダンスRs=40Ω(多重反射を意図的に発生させます)で、終端側の抵抗Rtm=50G(Open)、寄生容量C0=10pFとしています。また、各伝送路超は50cmとしていますので、全部で2mの長さになります。電圧源V0を信号源として、Voutまでの周波数特性を計算した結果を次に示します。


     

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    図 2

     

    17MHz辺りでピーキングが発生して、それが繰り返されているように見えます。
    横軸をリニアに変更した結果を下に示しました。


     

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    図 3

     

    横軸をリニアにすると、同じ形の繰り返しになっていることがよく分かります。周波数は35MHzで形も正弦波のように見えます。
    横軸が時間であれば、よくある波形なのですが、このグラフの横軸は周波数です。
    あまり見ない形になっているので、これで良いのか少し不安では有りますが、気にせず先に行こうと思います。

    先ずは35MHzと言う数字はどこから来ているのか考えてみることにします。
    35MHzの一周期は・・・ です。

    伝送路の長さは50cm×4=200cm。伝送路の計算に用いている遅延は70psec/cmとしています(普通のFR-4はこのくらいの遅延になります)。

    なので、信号の遅延量は、70ps×200cm=14nsecとなります。14nsecと言うことは

     

    20110609_7_misaizu.PNG

    の信号ならちょうど一周期分がぴったり伝送路に入ります。

     

     

     と成ると、2分の1周期では35.7MHzと成り、4分の1周期では17.9MHzと成ります。

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    図 4

     

    周波数特性でピークと成る周波数は伝送路の中に入れると、“腹”が反対側に表れ、反対に谷となる周波数は、“節”が伝送路の反対側に現れる法則があるようです。

    ときどき“反射の影響が出るのはどのくらいの周波数からか?”と聞かれることがあるのですが“伝送路長が4分の1波長になる周波数からかな”と、答えていました。
    が図 4を見ると、
    “伝送路長が8分の1波長になる周波数から。場合に依っては16分の1波長から”と答えないといけなかった事が分かってしまいました(大汗)

    例えば、10cmのストリップラインをFR-4基板に引いたときは・・・

    20110609_9_misaizu.PNG

     

     

     

    この周波数あたりから利得特性に盛り上がりが現れ、358MHzではピークとなるので、180MHz辺りの周波数では波形に影響が出てくると考えるべきです。


    ところで、周波数特性が分かっていると言うことは、逆フーリエ変換すれば時間軸波形を求めることが出来るかもしれません。“反射”は周波数特性やフーリエ変換と言った線形解析では解けないというイメージがあるのですが、試してみたいと思います。

     

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    この波形をフーリエ変換すると下記のような周波数成分に分解できます。

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    この各周波数成分に下の周波数特性を掛け算して・・・

     

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    その結果を逆フーリエ変換すると・・・下のような波形になります。

     
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    図 5

     

    同じ事を過渡解析で計算してみると、

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    図 6

     

    と成って、ほぼ同じ波形を得ることができました。注目すべきは、1個目のパルスです。
    周波数特性+逆フーリエ変換を使った結果では1個目のパルスから歪んでいますが、過渡解析は最初のパルスは歪んでいません。どちらの結果を信じれば良いのでしょうか。

    ひずみが発生する原因は多重反射です。パルスが伝送路内に入ってまだ時間が経過してない間は多重反射が起きていない(反射がまだ発生していない)ので、最初のパルスは歪まずに到達できるのです。この辺まで計算してくれる過渡解析の方がより現実に近い計算結果を示していると言えます。
    しかし、過渡解析には時間がかかります。伝送路が複雑になると指数関数的に計算時間が増えていきます。反面、周波数特性(AC解析)+逆フーリエ変換は伝送路の複雑でも殆ど計算時間は変わらないです。最初のパルスを無視すれば、十分使えるのではないかと思います。

    今回は“反射”を過渡解析を使わないで計算する方法を紹介しました。

    次回は、反射+線形解析となると避けては通れないSパラメータに触れたいと思います。

    <反射(その2)>

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    前回の続きですが、その事件は、砂漠ツアーが終わってホテルに向けてジープを走らせているときのことでした。ふと嫌な予感がして、尻のポケットに手をやったときに気が付いたのです、財布が無い事に。“ちょっと待ってくれ、財布を落とした!”と叫んだのですが、英語だったか日本語だったか覚えていません。既に脇の下には冷たい嫌な汗が出てきています。と言うのはこのジープの腰の辺りは細長い隙間が空いていて、そこから外に落ちてしまう危険があるから、尻のポケットに財布を入れない様にしていたのに、尻のポケットを使ってしまっていたからです。日も完全に落ちて辺りは真っ暗です。ジープは少し大きめな道路に出ると路肩に止まりました。“なぁに心配するな、昔から良くあることさ。いすの下を良く探してごらん出てくるから。このライトを使いな”と言ったのは、カウボーイ兼ドライバーのマイクでした。ジープに乗っていたメンバー全員で椅子の下やジープの周辺をくまなく探しましたが・・・ありません。
    弊社USスタッフのブライアンが“お前は明日、予定変更は厳しいだろ? 俺が明日、予定を変更して探しに来るよ”と提案をしてくれたのですが、マイクは“いや駄目だ。早く探さないとコヨーテが持って行っちまう。皮で出来ているんだろ? だったらまず向かうのはスーパーだ。そこでライトを調達しよう”と言い、そこから一番近いスーパーマーケットにジープを走らせるのでした。ブライアンたち弊社のUSスタッフらが懐中電灯を買いに行っている間もマイクは車体の下とかを丹念に探していて、半ばあきらめかけていた私にこう言うのでした。“お前の宗教は何だ? 仏教か? 俺らキリスト教はこんな時はこうするのさ”と胸に十字を切り、手を何かの上に載せる様にして“聖書に手を載せて祈るのさ。そうしたら、絶対に見つかるぜ”と。3つの懐中電灯とヘッドライトで4方向全てを照らしながら、ジープは再び砂漠の中へゆっくりと入っていきました。10分くらい経ったとき“あれは?”マイクが叫んだのですが・・・動物の糞でした。だいぶ砂漠の奥まで来て、もしかしたらコヨーテがもう咥えて持っていってしまったのかも、と思いかけていたときでした。ジープがゆっくり止まり、マイクが前方を指差しています。だいぶ先ですが、黒い四角いものが道の真ん中でヘッドライトに照らし出されています。ジープを降り、駆け寄り、自分の財布を確認してジープのほうに合図を送ると、“イェー”“We got it !””ヨッシャー”と歓喜の声が上がりました。

     

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    自分の不注意で大きな迷惑かけたのにもかかわらず、親身なってくれる仲間のありがたさや、きっと出来ると信じることの偉大さや、そして自然と共に生きるマイクの強さと優しさに触れ、財布よりもっともっと大切なものを見つけた夜と成りました。


    少し感動の余韻を残しながら、今日も技術ネタに行きたいと思います。

     

    今回も“反射”について話をしてみたいと思います。

    終端抵抗をOpenにしても波形のひずみが出ないことに驚きました。もちろん終端抵抗が特性インピーダンスと整合していないので、思いっきり反射はするのですが、終端抵抗の両端、つまりVoutの波形は歪んでいません。

    今までの理解は「終端抵抗で最初の反射が発生するので、この箇所の整合は一番重要でここさえ抑えておけば、後は少し整合が悪くても波形は歪まない」でした。

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    図 1

     

    図 1は信号源インピーダンスを5mΩで、終端抵抗を50Ωにした場合です。
    当たり前ですが終端側で整合しているので、反射波が発生していません。このとき信号源には3.3V/50Ω=66mAの電流を流す能力が必要になります。

     
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    図 2

     

    図 2は信号源インピーダンスを50Ωにして、終端抵抗を50GΩとした結果です。
    終端側では整合していませんので、反射波が発生します。しかし、受信端の波形V(vout)は図 1とさほど変わりません。また、信号源に流れている電流は図 1の半分で済んでいます。更には反射波が同じ量で逆向きの電流を流しているので、信号源に流れる平均電流、つまり直流の電流は打ち消されてゼロになっています。終端抵抗が50GΩ(OPEN)なので、直流電流が流れないと言ってしまえばその通りなのですが、感覚的には納得いかないところです。こうなると、終端側に整合抵抗を入れるよりも信号源側に整合抵抗を入れた方が消費電力が少なくて済むので、有利だと言うことになります。

    今までは終端側が理想的な状態、つまり寄生デバイスの影響がない事を前提にしてきました。実際には終端側(例えば、ICの入力端子)には寄生容量などがついています。

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    図 3

     

    例えば図 3の様に寄生容量=10pFとしたときの反射の様子をシミュレーションしてみると次の様になります。

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    図 4

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    図 5

     

    図 4が終端側で整合したもの、図 5が信号源側で整合したものです。
    両図とも早い周波数成分の立上りや立下りの部分が寄生容量C0(10pF)の影響で反射していることが分かります。これは寄生容量の影響で終端側の入力インピーダンスが高周波になるほど低くなっているためです。また終端部分の波形V(vout)を比較してみると、信号源側で整合した方の波形がなまっているのが分かります。単に消費電力の点では信号源側の整合が有利なのですが、伝送速度と寄生容量に依っては信号源側での整合では十分な特性が得られないことがあるので、終端側との併用も検討する必要が出てきます。両方で整合するのが一番なのですが、消費電力や性能を、寄生容量や伝送路の長さなどの制約条件から最適化することが設計者の腕の見せ所と言えると思います。

     
    今まではパルスの幅が2nsecと短くして反射波が重ならないようにしてきました。

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    図 6

     

    図 6はパルス幅を20nsecと長くして、反射波と重なる様にしたものです。なお、信号源インピーダンスRsを40Ω(すこし反射します)、終端インピーダンスRtmを50GΩ(全反射です)としています。
    終端側のV(vout)にはあまり影響が見られないですが、伝送路内のV(v3)では進行波と反射波が重なるため振幅が2倍になる箇所が出てきます。
    例えば、伝送路の中間(例えばv3)から信号を取り出すように信号を分配する仕組み(mini-LVDSインターフェースなど)では要注意です。

    今までは孤立パルス(1個だけ)を扱ってきましたが、実際には複数のパルスが使われます。

    20110516_8_misaizu.PNG図 7

     

    図 7の様に、前のパルスの反射に依って発生した2回目の進行波と次のパルスが重なると終端側の電圧に干渉として現れます。
    反射は発生させないことに越した事は無いですが、反射波をいち早く整合させて消失させる事が大切で、信号源側と終端側の両方で反射を繰り返すと(多重反射が起きると)、自パルス以外の波形にも大きな影響を与える事に成ります。

    いままでは過渡解析を使って反射を説明してきましたが、次回は小信号解析(AC解析)も使って、もう少し反射と格闘してみたいと思います。

    <反射>

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    昨年の11月、弊社のUSオフィスに出張した時のことです。打合せが早めに終わったのでUSスタッフが“アトラクションに行かないか?”と誘ってくれました。USオフィスはアリゾナ州フェニックスにあるので辺りは広大な砂漠です。その砂漠をジープで案内してくれるアトラクションに参加しないかとの事でした。時間になるとサスの硬い黄色のジープが迎えに来て、そこには口ひげをたくわえた初老のカウボーイが乗っていました。
    オフィスからジープで30分も走ると、そこはもう広大な砂漠の真ん中、と言ってもサハラ砂漠のような砂の砂漠ではなく、岩と低木と、樹齢300年の大きなサボテンが点在する「西部劇の砂漠」でした。この初老のカウボーイはマイクと名乗り、しゃがれ声で砂漠の歴史や砂漠で迷わない方法を色々と教えてくれたのです。

    20110419_1_misaizu.jpg
     
    “この辺りは金が取れたのさ。それを求めてアメリカ中の亡者が集まってきたものさ”、“あの山の向こうが有名なジェロニモがいた村さ”、“方角を見失ったときはサボテンの花を見れば良いんだ。なぜか分かるか? 花は南に向いて咲くだろ”、“そこの岩を見ろ。コケが生えているだろ。コケは北側に生えるもんさ”などと話はつきません。
    ふとしんみりとした様子で、“あれは3年前の事だった。道路から砂漠に2マイル入ったところで家族3人が道に迷って亡くなっちまったんだ。たった2マイルだぞ。俺のいうことを知っていたら死なずに済んだのによ”と。

    僕たちの身の回りには便利なものが満ち溢れているので、自然からのメッセージを感じなくても生きていられます。でもその便利なものに頼っているうちに、大切な人からのメッセージも感じられなくなり、聞こえなくなってしまうのではないかと思うのです。不便で苦労するからこそ必死に何かを感じようとする、人が本来持っている自然の力を忘れないように、たまには「砂漠」に行くべきだなと思うのでした。

    その事件が発生したのは、砂漠を引き上げてホテルに戻るときのことでした。
    何が起きたかは次回と言うことにして、今回の技術ネタに行きたいと思います。

     

    今回は“反射”について話してみたいと思います。

    3年前、このBLOGの第1回目のネタは<インピーダンスマッチング>でした。そのときは感覚的な説明をさせてもらったので、今回は少し技術的に説明をしたいと思います。

    “インピーダンス整合”とか“インピーダンスマッチング”と言う単語は高周波回路を設計した人なら一度は聞いたことがあると思います。整合とは“整い合う”なので、どことどこのインピーダンスが整うのかというと、信号源インピーダンスと伝送路の特性インピーダンスが同じであること、また、伝送路の特性インピーダンスと受信機の入力インピーダンス(終端抵抗とも言います)が同じであることを“インピーダンスが整合する”といいます。

    伝送路の特性インピーダンスって何かという辺りから始めたいと思います。
    Wikipediaよれば、
    『特性インピーダンスは、一様な伝送路を用いて電気エネルギーを伝達するときに伝送路上に発生する電圧と電流の比率。』
    さらに、
    『単位長さあたりのインダクタンスがLの電気伝導体と、単位長さあたりの静電容量がCの絶縁体を組み合わせた損失のない均一な伝送路の特性インピーダンスZ0は次式で表される。』
      

    20110419_2_misaizu.PNG

     

     

     

    と書いてあります。簡単に言うと・・・
    同軸やストリップラインはインダクタとコンデンサの組み合わせで出来ていて、その比率が特性インピーダンスになります。
    特性インピーダンス50Ωの同軸にデジタルマルチメータを当てて抵抗を測定しても、どこにも50Ωは有りません(同軸の芯線の端と端を測定しても50Ωになりません)。


    代表的な伝送路の特性インピーダンスを形状から求める計算式を下記にまとめました。
     

     
    20110419_3_misaizu.PNG
     

    図 1

     

     なお、式の中のεrは比誘電率で使う材料で決まります。


    特性インピーダンスが(例えば)50Ωの伝送路に信号を入れると、どんな波形になるかを確認してみましょう。

    20110419_4_misaizu.PNG

     

     

     

     

     

     

     

    図 2

    信号源V0は出力インピーダンスを可変できるように抵抗R1をつけています。
    伝送路T0~T3は中間の波形も観測できるように4分割にしました。

    20110419_5_misaizu.PNG

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    図 3

    信号源インピーダンスR1=50Ω、終端抵抗R0=50Ωの状態で、High幅が2nsecのパルス信号を入力した結果です。ストリップラインの特性インピーダンスZo=50Ωで、その長さは200cmです。
    (注意:長さが200cmのストリップラインに出会ったことはないですが、ここではオーバーに表現するために意図的に長くしました)
    信号源V0から出力したパルスがR1を通過してストリップラインを伝播して、終端側端子Vout(青)には15nsecに波形が到達していることが分かります。

    続いて終端抵抗R0を外して(R0=50GΩ)みましょう。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    図 4

    終端抵抗が特性インピーダンスとずれたため反射が発生し、信号源側に反射波が伝播していきます。また終端抵抗がなくなった分、終端側の振幅Voutが2倍になっています。
    しかし、不思議なことにストリップラインの入力Vinやストリップラインの中を通過していく波形V1~V3に振幅は半分のままです。半分と成っているのが気になるので、信号源側の抵抗R1を50Ωからずらしてみましょう


    20110419_7_misaizu.PNG
     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    図 5

    上の図は信号源側の抵抗R1=40Ωとした結果です。ストリップライン入力電圧Vinが図 4より少し高くなっているのが分かるでしょうか? 信号源V0の出力Vsを抵抗R1とストリップラインが抵抗分割してVinを作っているのです。普通の抵抗とストリップラインは異質なものなのに、これらが抵抗分割の様に電圧を作っている事が私には驚きです。

    20110419_8_misaizu.PNG

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    図 6

    信号源側の抵抗R1が特性インピーダンスと異なるので、反射波はふたたび抵抗R1で反射し、進行波としてストリップラインの中にはいって行きます。抵抗R1を40オームとした場合はGNDより下に進行波が発生します(図 5参照)が、抵抗R1を60Ωとした場合はGNDより上に進行波が発生します(図 6参照)

    それでは、信号源側の抵抗R1=1Ω、終端抵抗R0=50Gの場合はどの様になるかと言うと・・・
     

    20110419_9_misaizu.PNG

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    図 7

    終端側のVoutには+6Vや-6Vが発生する事に成ります。電源電圧=3.3Vなのになぜ?
    波は反射するとエネルギーが減衰しないので、いつまでも反射を繰り返します。その結果、電源電圧を超えた電圧やGND以下の電圧が発生することになります。
    この端子にもしもLSIなどの最大定格が低いデバイスが繋がっていたら・・・LSIが壊れたと騒ぐこととに成ってしまいます。

    次回も反射と格闘してみたいと思います。

    <雑音と誤り率>

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    私は学生時代に「弓道部」に在籍していました。マイナーなスポーツですが意外と面白く、かなりのめり込んで弓を引いてました。リーグ戦が近いと授業に出る時間より弓道場にいる時間のほうが長くなり、着替えるのが面倒で道着(袴)にセッタ(草履)を履いたまま授業に出る事が多くなっていました。弓道は直接対戦するわけではなく(そうだったら大怪我します)、的に当たった矢の数で勝敗を決めます。矢が当たらなくても相手が強かったわけではなく、全て自分に問題があるという所や、その矢が外れてしまうと試合に負けてしまうような大事な時になると、急に的が小さくなってしまうメンタルな所も、ゴルフに似ていると思います。
    弓道の試合は団体戦で、8人が20本ずつ矢を射って当たった矢の合計を競います。
    個人の技量が当たり外れを決めるのですが、試合は全員で戦います。前の後輩が的を外すと、嫌な流れを止めようと必死に当てに行きます。そんなプレッシャーで自分も的を外してしまったとき、後ろの先輩がビシッと当てて嫌な流れを止めるとホッとしたものです。

     

    20110222_1_misaizu.jpg

     

    弓道の一つ一つの動作には名前がついています。
    “胴作り”、“取りかけ”、“物見”、“打起し”、“大三”、“引分け”、“会”、“離れ”、“残身”、“弓倒し”の10段階の動作で構成されます。
    一番大事な部分は“会”です。これは的を狙っていて動作がとまって見える所で、動作の中では一番きつい所です。では誰に会うのか?
    もし外れたらどうしようとビビる自分や、きついからこの辺でいいやとあきらめる自分、次で頑張ればいいやと負ける自分や、今日は調子良いなと油断する自分・・・“会”では弱い自分に会うはずとOBに教わりました。
    そんな弱い自分に出会っても、弓を戻すことなく引ききって放った矢が的に吸込まれていくのを見ると、次もまた当てよう、その次も・・・と、授業が始まっているのにも気が付かず、夢中に練習をしていたものでした。

    アナログ電子回路の道もなかなか険しいですが、困難を乗り越えていろんな事が出来るようになり、変わっていく自分に気付くと、のめり込んでしまうことになるはずです。

     

    今回は“誤り率”について少し触れてみたいと思います。

    誤り率とは、その字のごとく符号を誤る確立です。つまり、エラーが発生することなので本当は電子機器ではあってはならないことですが、実際の電子回路の世界では、エラーとの戦いが見えない所で、いつも、そしてずっと続いているのです。エラーしないようにするにはどうすればいいのかを考えるのが、電子回路の設計者の仕事の始まりであり、ゴールでもあると思います。

    エラーしないようにするには、なぜエラーしてしまうかを知る必要があります。
    ではなぜエラーするかというと・・・それは雑音があるからです。

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    雑音はオシロスコープで何も信号を入れない状態でも観測できます。
    最近のサンプリングオシロスコープは、サンプリングした結果に色をつけて表現してくれる機能があります。上の図の例だと真ん中の赤い部分は、サンプリングした結果、この電圧の確率が多いことを示していて、そこから離れていくと段々確率が減って色が変わってきています。中心から0.2mVもずれた電圧になることはほとんどないし、中心から1mVずれた電圧は一つもなかったと言っています。
    例えば、信号が「今、1Vです」といっても、そこには必ず雑音が重畳されていて、あるときは1.01Vになってみたり、次に見たときは0.99Vになったりしているのが現実で、何千億の測定の中には0.5V以下になってエラーとなることがあるかも知れません。
    どのくらいの確率でエラーするかを知り、エラーしても致命的な問題になる前にそれをいかに防ぐかが勝負なのです。

    雑音がなぜ発生するかについては、これを専門で研究している先生方に任せるとして、とにかく絶対零度(-273℃)にでもならない限り熱雑音(白色雑音とも言います)が必ず発生します(熱雑音以外にも、ショット雑音やフリッカー雑音などが発生します)。
    しかし、雑音の発生度合いは計算で予測することが可能です。その計算式を使ってどの様に雑音が発生するかをグラフにしたものを“正規分布”(ガウス分布とも)言います。
    このグラフは中心が一番高くて、中心から離れるほど小さくなる曲線です。
    雑音の発生確率は小さい振幅の雑音は頻繁に発生するけど、大きい振幅の雑音はめったに発生しないと言っています。
    つまり、1.0Vに10mVの雑音が発生して1.01Vになる確率より、100mVの雑音が発生して1.1Vになる確立のほうが低いということです。当たり前のことなのですが、ここで大事なのは、それが計算で求めることができるということです。
    例えば、10回測定して1回だけ1.01Vになったことが分かれば、1.1Vになるのは1万回に1回である事が計算で分かってしまうということです。

    では具体的どんな計算をするかと言うと、次の様な計算をします。

     

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    誤り率は、ガウス関数を積分して求めることが出来ます。中心からどこまでを積分するかはS/N(信号振幅と雑音の比)で決まっていて、積分する範囲が増えると(S/Nが良くなると)“誤らない確率”が増え、“誤る確率”が減ってきます。
    つまり、どこまで積分するかを決めているS/Nが誤り率を決めていることになります。

    S/Nって何かと言うと、信号電力/雑音電力で電力の比率です。
    例えば、S/Nで20dBと言うことは電力比が100:1なので、電圧(電流)比は10:1になります。2乗がかかるかの違いがありますが、要は信号と雑音の比率です。

    デジタル信号を“1”、“0”に識別する場合のS/Nと誤り率の関係を考えてみましょう。
    ランダムなデジタル信号を重ね書きすると下図の様になります。
    この波形の事を“目”の様なので“アイパターン”と呼びます。

    20110222_4_misaizu.png

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    雑音がなければ“1”と“0”の電圧はいつも同じ値を示すのですが、雑音に依って電圧の値は“分散”します。この分散がS/NではNoiseに成ります。
    上図の例では、“1”側と“0”側で同じ分散になっていますがショット雑音などが“1”のときだけ増える場合は(光通信など)、非対称になります。

    一方、Signalは“1”“0”の各電圧と閾値までの差電圧になります。
    例えば、閾値が“1”に近づくと、“1”側のSignalが小さくなり、”0”側のSignalが大きくなります。従って“1”=>“0”と誤る確率と、“0”=>“1”と誤る確率が閾値の位置に依って変わるので別々に計算をする必要があります。
    雑音で電圧が少し分散しているので、閾値が“1”に近づくと“1”を“0”に誤る確率が高くなり、逆に閾値が“0”に近づくと“0”を“1”に誤る確率が高くなります。

    デジタルデータを“1”、“0”と識別するタイミングに依っては波形のTr/Tfの影響を受けて閾値より十分離れる前に判別をしなくてはならなくなります。この場合も信号が小さくなったと計算できます。

    閾値と識別するタイミングで決まる“識別ポイント”を上下左右に変化させて、同じ誤り率の場所につないだグラフを下図に載せました。円の内側に識別ポイントを調整すれば、その円の誤り率以下に成ることを意味します。
    なお、この計算では“1”“0”共に分散=0.04としていて、閾値を0.5とした場合はS/N=20×Log(0.5/0.04)=22dBとなります。

     

    20110222_5_misaizu.png
     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    上図では、誤り率を1e-18以下(1Gbpsで20年に1.5回のエラー)にするためには、閾値は0.4~0.6の範囲に、識別タイミングは800ps~1200psの範囲に調整する必要がある事が分かります。干渉の少ない波形の場合は良いのですが、何らかの理由で波形の干渉が発生すると状況が変わります。

    20110222_6_misaizu.png

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    700MHzに5dB程度のピーキングがある2次LPFを通した場合の波形を上図に示します。
    誤り率が1e-18以下となる閾値の範囲はあまり変化していませんが、識別タイミングの範囲は狭くなってしまいました。

    信号の雑音と干渉でアイパターンはどんどん小さくなっていくので、低い誤り率を得るためには閾値や識別タイミングの制御を高精度にする必要があります。更には雑音や干渉は電源電圧/温度、素子バラツキなどで時々刻々変化するので、識別ポイントもその変化に追従する必要が出てきます。
    例えば、別の識別機で上のような誤り率カーブを自分で計測して目標の範囲を求めてそこに識別ポイントを制御する・・・こうなると、もうアナログだけでは実現出来ないので、デジタルやファームの力が必要になり、すこし大掛かりな制御システムになってきます。
    でも、弊社には強力なデジタル/ファームチームがいるので案外簡単に出来てしまう気がします(^^;

    ランダム信号のアイパターンを見ていて、弓道の「的」を思い出しました。緊張やプレッシャーで的が小さく見えていた時は、心の700MHzに5dB程度のピーキングが発生していたのだと・・いま分かりました(汗)

    次回は、“反射”を取り上げてみたいと思います。